序章16~前を向いて~

 あおとが目を覚まし、完全に回復するまで三日を要した。
 肉体的なダメージはすぐにでも回復したのだが、重症なのは精神的なダメージの方だ。
 こればかりは、どんなに優れた魔法使いが存在していたとしても、癒す事は難しいだろう。

「みあさん……」

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 あおとは、みあが消えるのと同時に落とした、紫色の首飾りを握り締めた。
 それを握り、目を瞑ると、わずかな短い期間ながら、みあとの冒険の思い出が蘇ってくる。

「……くそ、僕がもっと強ければ!」
「――仮に強かったとしても、あおとが救えたものではないよ」

 そう冷静に言ったのは、フェイトだ。

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「どういう意味さ?」
「どうもこうもない。みあは私とあおとが戦っている間に、倒されてしまったんだよ。仮にあおとが強くても、できる事はあの場での敵討ちだけだった……」
「そんな事はない! きっと僕が強ければ、あの場でみあさんを救う事もできたはずだ!」
「あおと……。どんなドールだって、そんな万能なドールなんていないんだ……」
「……じゃあ、僕はみあさんの敵を討ちに行く……」
「そんな簡単に答えが出せる程、甘くもない問題だよ。あおとだって、それをわかっているはずだ」
「じゃあ、どうすれば良いの!? みあさんは消える間際、僕に勇者になれって言ったんだ! 勇者なら……勇者なら、そんな問題だってきっと解決できるはずなんだ!」
「――あおと!」

 乾いた音が、部屋いっぱいに響き渡った。

「私は、まだ会ったばかりだったから、みあがどんなドールだったのかは知らない。けど、みあが望んだのは、敵討ちなの? みあが望んだ勇者っていうのは、そんな事なの?」
「……僕は」
「……私は、明日にでも西側へ渡る」
「どうして?」
「私は、西側のドールに聞きたい事がある。彼女らは、どうしてみあを狙ったのか。きっと何か理由があるはずだ」
「なら僕もっ……」
「あおとは連れていけない。少なからず、頭に血が上ったあおとと一緒に行っても、足手まといになるだけだから」

 そう言って、フェイトは部屋から出て行ってしまった。
 入れ替わりで入ってきたのは、アマシーネの町長――セナだった。
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「うん、少しは元気になったみたいね」
「セナさん……」
「ほら、男の子でしょ! もうちょっとシャキっとしなさい!」

 セナは、やや強めにあおとの肩を叩いた。

「そんな事を言われたって、簡単に元気にはなれないですよ……」
「ふうん。私には、貴方達の冒険の渦中で、何があったのかはわからないわ」
「――っなら、なおさら簡単に言わないでくださいよ!」
「だからこそ、なのよ」
「えっ……?」
「私も、まがりなりにも港町の町長で、色々な冒険者を見てきたつもりよ。だから、本当に多くのドール達の感情を見てきた」
「…………」
「あおと君みたいに、大切な何かを失ってしまって、落ち込んでいるドールも数多くいたわ」
「それなら、僕みたいなのに対して、どう接すれば良いかもわかるでしょ!」
「ええ、だから最後に一言だけ。……結局、どんなドールもこうやって進んでいったわ」
「……?」
「悔しい事や悲しい事もあったけど、だからこそ前を向いて歩いていこう、ってね」
「そんな……簡単にはいかないですよ……」

 セナは、最後にあおとの髪の毛をクシャっと撫でると、そのまま部屋を後にした。
 自分一人しかいなくなった部屋で、あおとは猛烈な睡魔に襲われ、再び眠りについた――。




「……君、……お、と……君、あお、と……君――」
「う、ん……」
「あおと君!」
「はっ……!?」

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「みあさん? ……良かった、生きていたんだね!」

 嬉しさのあまり、あおとはみあに抱きつこうとするが、みあとの距離は一向に縮まらなかった。

「どうして……」
「あおと君。前を向いて!」
「前を……」
「あおと君はいつか、この世界に光を導く事ができるはず」
「そんな……僕にはそんな事はできないよ。僕は……勇者とかそんなんじゃなくて、ただ、みあさんと旅をしているのが楽しかったんだ」
「私も、あおと君と旅をしているのは楽しかった。……でも、残念だけど、それももう終わり。あおと君は、さらに上の舞台を目指して――」
「みあさん!?」

 みあの体は、再び光の粒子となり、消えていく。

「――忘れないで――君が――冒険をやめない限り――私は――君の隣で――一緒に歩いている事を――」



「みあさん……」

 あおとの瞳から、一粒の涙が落ちた。
 ふと目が覚めたあおとは、近くにあった時計を見つめ、どれだけの時間を眠っていたのかを確認した。
 どうやら、三時間は眠っていたらしい。
 体中に汗をかいている。

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「僕が冒険をやめなければ、みあさんも歩いているのかい?」

 虚空の中に、その言葉を放ってみるものの、当然のように返事はない。
 だが、あおとは少しだけ、ほんの少しだけ歩を進めてみようと思った。


 ――翌日。

「セナさん! 僕は西側の大陸へ行こうと思います!」

 そこには、ちょっぴり大人の眼をした、あおとの姿があった。

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「どうやら吹っ切れたみたいね。それでこそ男の子ね!」
「正直、まだ吹っ切れてない部分はあります。けど、本当に意味で吹っ切れるように、今はただひたすらに歩いてみたいと思います! 冒険したいと思います!」
「よく言ったわね! ……でも、船の出港にはまだ時間があるから、あおと君はあおと君の今すべき事をしなさい」
「今、するべき事?」
「確か……外で鍛錬に励んでいるんじゃないかしら?」
「……あっ!?」

 あおとは、持ち前のダッシュ力を活かして、颯爽と部屋を飛び出していった。
 セナの家から外に出ると、すぐそこにフェイトの姿があった。

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「あの……フェイト……さん」
「あおと?」
「その……」

 何を言おうか、頭の中では真っ白な状態のあおと。
 それを見兼ねてか、フェイトは微笑し一言。

「丁度、組み手の相手がほしいと思っていたところです。あおと、相手をしてもらえませんか?」
「組み手? ……よし!」
「腑抜けた戦いをしたら許しませんよ!」
「そっちこそ! 手加減はしないよ――!」

 どうやら、あおとの冒険はまだ、ようやく始まったばかりのようです。
 あおとの大冒険 序章 終。


全16話、これにて序章は終了です。
次章は、第二章の起章となります。
ちょっとだけ間を空けてから書こうと予定していますが、もしかしたら早くなるかも?

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2012/10/17 ドールデビュー!
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