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起章12~予言~

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 ――みあはマインロールの魔法を発動した!
 ドールナイトの心が、みあの魔法力によって浄化されていく。

「ほら、野にお帰り」

 ドールナイトは、嬉しそうにかけていった。

「ほう……」
「凄いなっ、みあ! それが覚えた魔法の一つってわけか!」
「そうです。マインロールは……言い方はあまり好きではないですけど、洗脳魔法なんです。相手の心を私の魔法力で支配し、洗脳する魔法ですから、使い方一つで善にも悪にもなってしまう……」
「でもさ、みあなら間違った使い方なんてしないさ!」
「ありがとうございます、勇者様」
「――みあさん」

 サクヤがみあに話しかけた。

「いくつかの魔法を習得したと聞いていますが、他には何が可能なんですか?」
「他には……マインロールの他に、コルドリープって魔法を」

「何だか難しい魔法名ばっかだなあ……」と勇者。

「それで、コルドリープとはどのような魔法なのですか?」
「コルドリープは……簡単な話、石化魔法とでもいうのかな。自分自身にはかけられないのだけれど、仲間にかける事によって、どんな攻撃にもびくともしない状態に変化させるの」
「効果の持続時間は? きちんと動けるようになる魔法なのですか?」
「動けるよ。少しの魔法力で発動させるだけでも、大体2分、3分は効果持続するよ。時間が経てば、自然に動けるようになるみたい」
「……なるほど。みあさんは随分と上級魔法を扱えるようですね」
「そんな事はないよー! ……あ、あともう一つあるんだった」

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 勇者とサクヤは、みあの次の言葉を待った。
 みあは、そんな二人の注目に恥ずかしそうに口を開いた。

「最後の魔法はゴースシェル。使い道はよくわからないんだけど、ある物質に私の魂と魔法力を封印するものなの」
「な、何だか、凄い怖い魔法だね……。だってそうだろ、もしかしたら封印したまま出られなくなるかもしれないんだろう?」
「あ、言われて初めて気がつきました。そうですね……もしかしたら、出られなくなるかもしれないんですね。うあー……、そう考えたら凄く怖くなってきました」
「ははは、みあは呑気だなあ――」

 戦いの前の、小さな一幕の事である。
 あおとと別れたユズハは、アークウエストに帰還していた。
 ここ数日間の出来事の中で、凄く気になる事があった為だ。

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「あら、ユズハさん。随分と帰りが遅かったですね?」
「ただいまっす、サアラ先輩! ちょっとスイートツーで、モンスター討伐の依頼を受けていたっすよ」
「ああ、それで遅かったのね。それで、モンスターとは何だったのです?」
「ドラゴンっす!」
「まあっ、ドラゴンなんてユズハさん一人で倒せたの? あれは私達でさえも、協力してやっと倒せるくらいなのに……」
「いやあ、それがまだっす」
「良かったら、私も協力しましょうか?」
「あー……」

 ユズハは、ふとあおとの事を思い出した。
 あおととの約束ではなく、サアラと接触する事に問題があるという事だ。

「いや、大丈夫っす! ちょっと町で仲良くなったドールがいるっすから、その子と討伐したいんすよ」
「並の冒険者では、私達、四天王の実力にはついてこれないと思うけど……。まあ、良いわ。ユズハさんがそうしたいというのなら、やりたいようにすれば良いと思います」
「サンキュっす!」

 ユズハはサアラと別れ、アークウエストのさらに上の階層へと進んでいく。
 階段を上っている最中、ユズハはほんの数日前の事を思い出した。
 それは、みあが撃たれるよりも前の出来事。

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「――我々、西側にとって、驚異となるドールが現れる」

 アークウエスト最高幹部にして、預言者である黒猫は言った。
 その予言に対して、ユズハが聞く。

「驚異となるドールだけじゃ、全くわからないっすよ? 何かもっと正確な情報はないんすか?」
「少し待ちなさい。せっかちな子ね……。――東側、港町……――。わかるのはこれくらいね」
「ユズハさん。東側の港町といえば、アマシーネですね」
「そうっすね。とりあえず、アマシーネ周辺を探してみるっす! 黒猫の予言に出てくるドールなんすから、よほど奇怪なドールなんすよ!」

 こうして、ユズハとサアラは港町アマシーネに向かい、予言に提示されたドールの――いわば暗殺の仕事を開始する。
 そして、怪しいドールはすぐに発見された。
 だがついでに、ユズハ達の注目を集めたのは、最近になって注目を集め始めた何でも屋――フェイトの存在だった。

「何でも屋のフェイトなら、確かに西側の驚異になるかもしれないっすけど、あまりに現実的すぎて、むしろ予言に提示されるには普通すぎるっすよね?」
「そうですね。あの三人の中で、最も怪しい存在なのは、あの白衣のドールですね。どうして彼女はミスティオールの存在なのでしょうね?」
「ま、理由なんてどうでもいいっすよ。私達の任務は、西側の驚異になるとされるドールの暗殺っすからね!」

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 そして、サアラの持つマジックライフルより銃弾が放たれた――。



(あの時は最も怪しいのは、みあと呼ばれている白衣のドールだった。現実的に考えても、フェイトが候補にある。正直、あおと先輩は眼中になかったんすけど……)

 短いパーティーだったかもしれないが、ユズハの違和感は確かなものへと変わっていた。

(今なら確信できるっす。西側の驚異になるドールとは――)

 ユズハは、大きく、派手な装飾がされた扉を開けた。
 すぐに見えたのは、預言者――黒猫の姿だった。

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「騒々しいわ。何かあったの?」
「一つ、確認の意味も込めて調べてもらいたいんすよ」
「何を?」
「西側の驚異になるドール」
「……?」
「この存在が、予言の中で完全に消えたのか? という内容でお願いするっすよ」

 ユズハは願う。
 例え立場は敵同士でも、共に戦ったドールを討つ事がないように、と。
 しかし――。

「いまだに……存在するわ。予言の内容には、港町スイートツー、とあるわね」
「……そうっすか」

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 ユズハの瞳には、友人の情という概念の光が、完全に消えていた――。


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2012/10/17 ドールデビュー!
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撮影は2014/7/18よりNikon COOLPIX P100を使用。

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